「人類補完計画」で全人類がプログラミングできる社会を作る 清水 亮 ユビキタスエンターテインメント代表取締役社長CEO

professor's TALK

人間の能力拡張を目指して-コンピュータが当たり前になる未来

私が「人類補完計画」で目指しているのは、人類が皆プログラミングできるようにすること、そしてコンピュータによる人間の計算能力の拡張です。何かしらの道具を使って人間の能力を拡張することをHuman Augmentationと呼びます。例えば皆さんにとって最も身近なHuman Augmentationとしては眼鏡があります。おそらく眼鏡が発明されていなければ、我々の文明はとても貧弱だったでしょう。眼鏡がなければ本も読めないし文字もかけないという人がたくさんいたでしょう。もちろん大学だって行けません。ところが眼鏡をかけるだけで、人類は視力という能力の格差をほとんど無力化しました。このように能力が拡張された人間のことを、Augmented Humanと呼んだりもします。

最近ある国際学会で、面白い発言がありました。「これからはAugmented Humanではない。Enchanted Humanだ」と。Enchantedというのは、魔法をかけるという意味です。テクノロジーが進歩すればするほど魔法に近づいていく。眼鏡なんて魔法そのものです。電源もいらないし半永久的に使える。さらにかけていることに気づかなくなっていく。眼鏡に比べれば、コンピュータはまだまだ人間にとって自然な存在ではありません。眼鏡の歴史を考えると、最初にルーペがあってその後モノクル(単眼鏡)が発明され、そして眼鏡が登場しました。ルーペやモノクルは使うのにとても不便なものです。現在のコンピュータはまだせいぜい、ルーペやモノクルの時代だといえるでしょう。

パーソナルコンピュータが誕生してから、実はまだ50年しか経っていません。そして現在のパーソナルコンピュータに備わる基本的な設計は、すべて1970年代のパロアルト研究所で、アラン・ケイを中心とする研究者たちによって発案されました。GUIやマウス、キーボードやタッチディスプレイまで全てです。そしてこの研究所を見学に訪れたビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズがWindowsやMacをつくりました。つまり現在のコンピュータの源流は、全て70年代のパロアルト研究所にあるわけです。

しかしビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズがそのアイデアをもとにパーソナルコンピュータを作ったとき、最初に捨てたものがありました。それがプログラミングです。彼らは、一般人はプログラミングなんかせずにソフトメーカーがつくったソフトを使えばいいという発想だったのです。しかしだからこそ、現在のパーソナルコンピュータを使うのにプログラミングが出来る必要がないのです。

コンピュータの短い歴史を考えれば、今後ますます進歩して、いずれ人類にとってごくごく当たり前の存在に、つまり眼鏡のような存在になるでしょう。そしてそのためには、「人間がコンピュータをより使えるようになること」と「コンピュータが人間により使いやすくなること」の二つの方向性が必要です。

「人間がコンピュータをより使えるようになる」ために、まずは全ての人が自らプログラミングを通してコンピュータを操作できるようにする必要があります。既存のソフトを使うことは、開発者の考えに縛られることに過ぎません。自分の考えを、コンピュータを使って自在に形にしていくためには、プログラミング能力が不可欠になってきます。そしてこれを実現していくのは教育です。

もう一つの「コンピュータが人間に近づく」方向は、イノベーションによって可能となります。その中で特に重要になってくるのは、最近流行りのDeep Learningです。この技術のおかげでコンピュータは相当賢くなりました。そして将来、もっと技術が発達していけば、コンピュータはより適切に人間がしたいことを予測し、提案できるようになるでしょう。

しかしコンピュータに提案されたことを、実際にするかどうか決めるのは人間であって、どこかで「なにをやりたいか、やるべきか」について人間とコンピュータの間でコンセンサスをとることが必要になってくるはずです。そしてそのコンピュータとコミュニケーションするために必要なインターフェースと言えば、プログラミング言語しかないわけです。

だからこそ、未来において、人間に近づいたコンピュータという存在とうまく付き合っていくためにはプログラミングのスキルが必須になってくるのです。そしてそれができるようになったとき、コンピュータは眼鏡のように身近な存在となり、人間はとてつもなく能力が拡張された、Enchantedな存在となることでしょう。

SCHOLAR講師

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